認知症に寄り添う妻の証言
「車の運転中、交差点でダンプカーが直進してきたのに右折したんです。今となってはあれがサインだったのだと思いますが、その時は疲れているだけだと・・」
そう静かに語る、Tさん。
夫(Aさん65歳)が認知症と診断される前のことでした。
ある日、職場で頭痛を訴えたAさん。
検査の結果、医師から「軽度認知症」と告げられました。Aさんが54歳の時でした。
当時、Aさんは普通に生活ができていたので、Tさんは誤診だと思ったそうです。一方、Aさん自身のショックは大きく、じっと考え込み動かない日が続きました。
表情が失われていくのが辛かったと、Tさんは話します。
Aさんは2年間休職し退職。一家の生活はTさんの肩にかかってきました。家のローンや教育費など経済的に大きなダメージを受けましたが、Tさんが仕事をしていたことで、何とか切り抜けることができました。
下の娘さんは症状が進むお父さんを受け入れることが難しく、トイレを汚したAさんに厳しく当たることもありました。
その時、田口さんは「誰でも病気になる。家族なのだから助けてあげよう」と諭しました。
そんなTさんですが、数年はAさんの病気のことを周囲に打ち明けられなかったそうです。ちょうどその頃、東日本大震災が発生、悪夢のような映像を見て思います。
「家や家族を失う人もいる。認知症は大きな問題ではない」と。
仕事から帰ると家中の電化製品が壊されていたり、夜中に何度も同じ話を聞かされたりする。毎日様々なことが起きました。
それでも「怒らず受け入れる」ことの積み重ねで、うまくかわせるようになり楽になったと言います。そして、Aさんができることを探し、それを明日も大切にすることを心がけました。
Aさんの笑顔が何よりの喜びになりました。
Tさん自身、苦しい時は友人に相談し、家族会に参加することで乗り越えてきたそうです。また、デイサービスなどで介護をサポートしてもらえたことで、仕事を続けられました。
しかし、一人暮らしや老老介護の世帯では、助けを求め、相談することさえできない人もいるはず、とTさん。
「認知症サポーターをもっと増やし、声をあげられない人を支援してほしい」と言います。
認知症の人は毎日知らない人に囲まれているような状態で、常に混乱と不安の中にいると語るTさんは「周囲の人の表情や言動に敏感です。優しく語りかけると、不安感も和らぐと思います」と話します。より多くの人に認知症を理解してほしい、と考えています。
Aさんは現在、入院生活を送っています。家族との記憶が削られ寂しさを感じるTさんですが、今日も笑顔でAさんに寄り添います。
※写真はイメージです
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