認知症改善に音楽療法が効果的?科学的根拠と実例を解説
家族が認知症を発症すると、日常生活の中で記憶力や感情の変化に戸惑うことがあるでしょう。
そんな中、「音楽が認知症の改善に役立つ」といった話を聞いたことはありませんか?
しかし、本当に音楽を聴くだけで認知症の改善が期待できるのでしょうか?
この記事では、音楽療法の科学的な根拠とともに、実際の事例を交えて詳しく解説します。
音楽で記憶がよみがえる?科学的根拠とは
音楽が認知症改善に効果的だとされる理由の一つは、「脳の広範囲な領域を刺激する」ことにあります。
特に、以下の3つの要素が影響を与えると考えられています。
①聴覚刺激による脳の活性化
音楽を聴くことで、記憶を司る「海馬」や、感情をコントロールする「偏桃体」が活性化されます。
これにより、忘れていた思い出がよみがえったり、感情が豊かになったりすることがあります。
②リズムが脳の処理能力を高める
リズムに合わせて手拍子をしたり、口ずさんだりすることで、運動機能や認識機能が向上する可能性があります。
こうした活動は、日常生活での自立度を向上させる手助けになります。
③懐かしい音楽が自分を取り戻すきっかけに
認知症の方は、最近の記憶よりも昔の記憶の方が残りやすい傾向があります。
そのため、若い頃に聴いていた音楽を流すと、それがきっかけで会話が弾んだり、自分の名前や家族の顔を思い出したりすることもあります。

実際にあった音楽療法の成功例
■ 事例①:好きな曲を聴いて記憶が戻った男性
ある80代の男性は、認知症を発症し、自分の娘の名前も思い出せなくなっていました。
しかし、若い頃に好きだった曲をヘッドフォンで聴かせると、顔つきがどんどん明るくなり、歌詞を口ずさみ始めました。
そして、しばらくすると娘の名前を呼び、家族との会話ができるようになったのです。
■ 事例②:音楽をきっかけに積極的に行動するようになった女性
70代の女性は、認知症の進行により無表情が続いていました。
しかし、一緒に童謡を歌ったところ、しばらくして「昔、学校でよく歌ったわ」と話し始め、表情が豊かになりました。
それ以来、曲に合わせて手拍子をしたり、歌詞を覚えようとしたりと、日常生活に活気が戻ったそうです。

おすすめ映画『パーソナルソング』

認知症患者の音楽療法に迫るドキュメンタリー映画の『パーソナルソング』という映画があります。
映画『パーソナルソング』は、アメリカ、カナダ、イタリア、イギリスなどで非常に高い評価を受けた作品で、2014年度サンダンス国際映画祭ドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した注目の映画です。
2014年12月には日本でも公開されています。
他にもミラノ国際映画祭最優秀監督賞、カルガリーアンダーグラウンド映画祭観客賞、シアトル国際映画祭ドキュメンタリー賞、パークシャー国際映画祭観客賞、セドナ国際映画祭作品賞、フォートマイヤーズ映画祭作品賞など、軒並み映画賞を受賞しました。
娘の名前も覚えていない認知症のおじいさんに、好きだった歌を聞かせると、歌を歌い出したり、陽気になったり・・・
失われていた自分を取り戻すかのように、自然と家族の話まで話し出したといったケースが盛り込まれたドキュメンタリー映画となっています。
この映画を見ると、既存の治療法以外に音楽で改善する様子に感動すると思いますよ。
自宅でできる簡単な音楽療法の方法
家庭で気軽に実践できる音楽療法には、次のような方法があります。
方法 | 内容 |
---|---|
懐かしい曲を聴かせる | 若い頃に好きだった曲をかけることで記憶を刺激する |
手拍子をしながら歌う | リズムに合わせて手を叩くことで身体的な刺激を与える |
一緒に口ずさむ | 本人が自然に歌いたくなるよう、家族も一緒に歌う |
楽器を使ってみる | シンプルな楽器(鈴、カスタネットなど)を鳴らしてリズムをとる |
ポイントは、「無理に歌わせたり思い出させたりしないこと」。
あくまで自然にリラックスできる環境を作りましょう。
この記事のまとめ
音楽は手軽に始められる認知症の対策の一つです。
ぜひ、ご家族で楽しい時間を過ごしながら試してみてください。
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